捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
9.愛の誓い



奏士さんと私の結婚が決まったのは夏だった。
私の離婚から一年が経ち、奏士さんも自身の三栖ビジネスソリューションズの仕事をメインにし、日本から滅多に離れなくなったのが契機となった。

双方の両親に挨拶に行き、結納も夏のうちに済ませた。
当初は三栖家へ遠慮し、結婚に慎重な姿勢を見せていた私の父も、奏士さんの真摯な態度や、三栖家の鷹揚な様子に安心したようだ。私の結婚を祝福してくれた。挙式の日取りは11月と決まった。

「いよいよ同棲スタートね」

9月の頭、引越しを翌日に控えた私は、沙織さんとランチをしていた。場所は、宮成商事の近く神田駅前のカレー屋さんだ。ふたりともお昼休みに待ち合わせてランチしている。

「同棲といっても、最近は私がほとんど奏士さんの部屋にいたから今更だけど」
「でも、おうちを出るのは感慨深いんじゃない?」
「これで二度目だから、三つ指ついてご挨拶っていうのは省くかな」

冗談で言ったつもりだったけれど、沙織さんはまずいことを言ってしまったという顔をする。慌てて「気にしないで」と口にする。あまりいいジョークじゃなかった。

「あの頃は、私何も知らなかったの。結婚すれば幸せになれるって信じていて。とんだお嬢さんだったわ。自分の力で生きていなかった。離婚を経て、今があると思ってるから」
「そうね。里花さん、出会った頃と比べて強くたくましくなったかも」
「でしょう」
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