仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
いったい何の魂胆があるのか、皇帝は余裕の構えでユーリスは何も知らなくていいと言って詳細は教えてくれなかった。
しかも全然関係ないフローラのことを聞いてきて辟易した。
「どうだフローラとは?毎日デートしてるようだが、もうキスはしたのか?」
「ぶっ……こんな時になにを聞いてくるんですか!」
落ち着こうとお茶を口にしようとしてとんでもない質問に吹き出したユーリスをニヤニヤと見てくる皇帝に顔をしかめる。
「お前のことだから、手も握ったことがないとか言いそうだな。見かけによらず純情だから」
「うるさいですよ、今そんな話をするときではないでしょう」
「ではいつならいいんだ? 婚約者同士なのだからキスぐらいすればいいのに、お前たちは仲睦まじそうに見えて実は手を出せずにいるんだろう? お前が悩んでいるのはお見通しだ」
ユーリスはふんとそっぽを向いて聞く耳持ちませんよと態度で表したつもりが、皇帝は意に介さずずばりと本心を言い当ててきてドキリとした。
「どうせまだすべてを曝け出していないんだろう。だから見せたときのフローラの態度が気がかりで手を出すのも躊躇してる。違うか?」
「……知りません」
「図星だと顔に書いてあるぞ?」
しらを切ろうとしても皇帝は確信を得たようにおかしそうに笑ってユーリスをからかう。
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