仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「私にではなく、お父さまに言ってあげて」
瞳を潤ませふたりはてててっと黒い男に駆け寄り抱きついた。
「ゾンビなんて言ってごめんなさいお父さま」
「ごめんなさいお父さま」
抱きついてきたふたりにお父さま、こと、ユーリスが片膝をつき目線を合わせた。
「本当は怖くなんてないのよ? 怖がったふりをしていただけ」
「僕だって怖くないよ! 大人になったらお父さまのように白い仮面付けるんだから」
「私優しいお父さまのこと大好きだもん」
「僕だってカッコいいお父さまが大好きだもん!」
ふたりはそう言って両側からユーリスの頬にチュッチュと競うように何度もキスをした。
「ふたりとも……」
うれしいことを言ってくれるわが子たちにユーリスの頬は緩み、お返しとばかりにユーリスはふたりを抱き締める。
「私も大好きだよ、かわいい私の天使たち」
その様子を微笑ましく見つめていたフローラは楽しそうな声を上げた。
「さあ、仲直りできましたね。では問題です。あなたたちのお部屋に宝物を隠しました。夕食の時間までに見つけることができますか?」
わあっと歓声を上げ目を輝かせた子供たち。
抱きしめる腕を緩めたユーリスに行っておいでと送り出され、ふたりは嬉々として自分たちの部屋へと駆けて行った。
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