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ユーリスが自宅に帰ってきたのはフローラが泊まるようになった三日後の深夜だった。

「美しい方なのはもちろんですが、とても優しく朗らかで今まで会ったどのご令嬢より素晴らしい方ですよ」
遅い時間にも関わらず待っていたベリルは熱心にフローラの様子を話しユーリスは複雑な心境になる。
今まで婚約者となった令嬢は皇帝の命令で一度は屋敷に招待するのだが、ベリルがここまで手放しに褒めたのは初めてだった。
付き添いの侍女もいない女性を屋敷に滞在させるのも初めてで使用人たちと上手くやれるか心配していたが、それは杞憂に終わってよかった。しかしどうせ数日後には去っていくというのに変に肩入れしてないかとちょっと違う心配が出てくる。
「丁寧にもてなせとは言ったが、情を掛ける必要はない。彼女は数日後には去るのだから」
「ユーリスさま。私はフローラさまがユーリスさまに相応しいと思いますが」
ベリルはたった三日で随分とフローラに心酔されてしまったようだ。
肩を竦めたユーリスは宮殿で見たフローラを思い出す。彼女は確かに美しかった。
長い亜麻色の髪に綺麗なグリーンの瞳、そして何より笑顔がかわいらしく目を引いた。
立ち居振る舞いも凛としていてとても皇帝の言う貧乏貴族などとは思えない。
どこぞの王女と言われても信じてしまいそうなほど高貴な雰囲気を持っていた。