仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
しかし、彼女が自分と結婚するのかと考えると、それはないと首を振る。
「相応しいもなにも、彼女が私を選ぶわけないだろう。今までもそうだったじゃないか」
「そうさせてきたのはユーリスさまご本人でございましょう?今までのご令嬢はユーリスさまの冷遇に耐えかねて去られたのですよ?」
わかっておられます?とベリルは呆れた顔だ。
「そうはいっても、結局皆この仮面の下を見たら逃げ出すではないか」
仮面に手を添えユーリスはため息を吐いた。
今まで七人も婚約者を宛がわれてきたが、この仮面の下を見せたのは最初のひとりだけ。
その女性は素顔を見て化け物でも見るように恐れおののき逃げ出した。
後の六人は素っ気ない態度をとっていると素顔を見せる間もなく冷たいと言われ去っていった。
おかげで冷酷な氷の仮面の貴公子などと不名誉なレッテルを張られてしまったのだが、苦い思いはもうしたくないと心を閉ざしてしまったユーリスにはどう思われようとどうでもいいと思っている。
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