仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
図書館は教会のように荘厳でステンドグラスがキラキラと管内を照らし訪れていた人々を心地いい光で照らしていた。吹き抜けの三階まであるすべての壁は天井まで伸びる書架がずらりと並び、中央の低い書棚では子供向けの絵本が並びそのそばで子供が楽しそうに絵本を読んでいる。大人は目当ての本を探したりゆったりとソファー席で読み、テーブル席では勉強する学生などもいた。
「ここ全部ユーリス様の設計なんですよね!開放感があって居心地よさそう。とても素敵です!」
「館内は静かに、フローラ嬢」
「あ、ごめんなさい」
思わず興奮して大きな声を出してしまったフローラは肩を竦めた。
その後もくまなく館内を見学し本のタイトルに興味津々で手に取る彼女をユーリスは複雑な気持ちで見つめていた。

舞踏会のあの日、ユーリスとダンスを踊ったフローラはキラキラと輝いてとても可愛らしかった。
その後、ダンスの興奮から落ち着いたフローラは、鶏を追いかけ捕まえていたと思えないほど人が変わったように凛とした気品に満ち溢れ人目を引いた。
少しユーリスが傍を離れていた間にフローラは次々と声を掛けられ戸惑っているかと思いきや、物怖じすることもなく女性たちとは楽しそうに会話し、男性とも難なく対応し五人も優雅にダンスを踊った。
それが多いか少ないかはあまりこういう場に出ないユーリスにはわからないが、終始楽しそうだったフローラに自分は必要なかったとなぜか落胆したものだ。
本を見つめるフローラは無邪気な顔であの変わりようはなんなんのだろうと不思議に思う。

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