仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
(フローラは元気にしてるだろうか?私のことは恨んでいるのだろうな)
ふうっとため息をつくと目の前にムッとした顔をする皇帝がいた。
「なっ!なんですか」
「話の途中でよそ見をするな!」
「まだなにか?」
「ったく、大事な話をしてるというに」
(ただの世間話でしょうに)
口には出さないもののちっと舌打ちをするユーリスに、引くりと口を歪ませた皇帝は目を細める。
「ユーリスにどうかと思ってな」
「なにがです」
「友人の娘をお前の婚約者にだ」
「はあ?」
聞き捨てならないひと言にユーリスは血相を変えて皇帝に詰め寄る。
「どういうことですか!フローラ嬢とのことがあったばかりなのに!」
「どうもこうも、お前はフローラ嬢を追い出してしまったではないか。婚約解消したも同然、次の婚約者にうってつけの娘がいるのだちょうどいいだろう?」
「だからって、何度婚約者を宛がえば気が済むんですか!もう私のことなど放っといてください!」
「そういうわけにはいかない。お前に幸せな結婚をさせるのは私の使命だ」
「そんなこと私は頼んでいない!」
憤ったユーリスは立ち上がり叫ぶと、仕事を放り出し出て行こうとする。
「ん?ユーリス、どこへ行くのだ?」
ちょうど執務室に入ろうとしていたスペンサー侯爵の問いかけにも答えずに執務室を出て行った。
「陛下、どうされたのです?」
「ん、ちょっと度が過ぎたかな」
肩を竦めた皇帝にスペンサー侯爵は??顔で首を傾げた。

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