粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<加賀城の部屋のベランダ・18時45分>

あの、感触、余韻・・・
不思議な感覚だった。

お互いの感情が流れてあって、
溶けあうような感覚。

もっと深く絡めば、
境界も溶けて無くなってしまうだろうか・・・・

満たされていく・・
充足感というのか

冥府の女とも違う、他の<人の女>とも・・・
こんな体験はしたことがない。

ジャスミンの香りの中で
満たされない魂と、傷ついた魂が・・・
何かの琴線に触れて共鳴し
響き合った。

もう一度・・会いたい・・
触れたい・・・満たされたい。

これが、<人の世界での愛おしい>という感情なのか。

瞑王はジャケットのポケットから、たばこを取り出した。

火をつけてゆっくりと煙を吐く。

「やべ!
ベランダも禁煙区間だった!」

とっさに子どもが隠れるように、
ベランダの床に座り込んだ。

とにかく、
あの座敷童を何とかしなくてはならない。

姉に対しての執着の強さで、
俺の体を乗っ取ろうと、
また仕掛けてくる可能性がある。

考えていたよりも力は強い。

405号室のベランダには、
瞑王こと加賀城、
406号室のベランダには
ミイヤが、
それぞれ床に座り込んでいる。

防火扉の薄い板一枚を隔てて。

マンション中庭の植栽の大きい木の枝に止まっている、
別のカラスがいた。

405と406のベランダの様子をうかがっている。

大森カラスは独り言を吐いた。

「瞑王の悪い癖が出なければいいのだが・・・
俺の仕事が増えてしまう。

ただでさえ、マネージャーは忙しいと言うのに・・・

女優のみずきの件が
やっと片がついたとこで・・・・」

405のベランダにいた、加賀城が指を鳴らした。

「おい、そこにいるのだろう・・
大森」

大森カラスが
<聞こえたか>というように渋々と答えた。

「お呼びですか。瞑王様。」

「406の座敷童を何とかする。
それに天界とも連絡をつけてくれ」

「わかりました。すぐにいたします」

大森カラスは
ベランダの鉄柵にとまって、
頭をちょっとさげてから、飛び立っていった。
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