優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！
第８話　仕事
「ねえ、日奈子(ひなこ)。どうして、黒塗りの車が家まで迎えにきてるわけ？」

朝食のヨーグルトをスプーンでぐるぐるとかき混ぜながら、緋瞳(ひとみ)お姉ちゃんが聞いてきた。

「えっと、秘書だから」

専務付きの秘書になったから、壱哉(いちや)さんと一緒に出社するために迎えに来てくれる。
昨日、言われたままに伝えたのにそれを聞いた緋瞳お姉ちゃんがため息をついた。

「壱哉さんが優しい人だからって勘違いするんじゃないわよ？泣くのはあんたなんだから」

そんなの言われなくてもわかってる。
いくら私の頭の回転が鈍いとはいえ、親切からだってわかってるし。

「でも、水和子(みわこ)お姉ちゃんも一緒に乗せて行けばいいのにね。同じ会社なんだから」

「そんなことできないわよ」

朝食を食べ終わって、すでに出勤していたと思っていたのにまだ水和子お姉ちゃんは家にいたらしく、緋瞳お姉ちゃんは気まずい顔をした。

「壱哉は親しくても専務と主任という会社での立場を崩さないわ」

「えー。水和子お姉ちゃんはそれでいいわけ？」
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