今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
2-2
「鈴さん。明日はお店を休んで一緒に出掛けましょう」

叶がそう言ってくれたのは12月23日。クリスマスイヴの前の日のこと。 

あたしの顔には思い切り『嬉しい!』って書いてあったと思う。そんなに喜んで見せると、まるでプレゼントでもねだっているかのように思われそうで。平静を装って「どこ行くの?」と訊いてみる。

「内緒。それとも僕のエスコートじゃ不安?」

「全然」

即答。

今までだって映画に誘われれば、あたしが観たがった作品のチケットを予約済みだったし、食事に出掛けても、最初からお店を選んでくれていてパーキングに迷ったりだとかもない。

前カレは案外思いつきで行動するタイプだった。映画も、適当な時間に行って上映時間が合うのを選んだり、買い物がカラオケになったり。まあそれはそれで楽しんではいたけれど。

叶の場合なんでも卒なくこなしても、完璧主義とかじゃなくて先回りが出来るひとなんだと思う。ちゃんと相手を見て考えて行動するから的を外さない。そういうひとだって思う。

どんな一日であれ明日は特別の想い出になる。期待とか期待とか期待とか。色々考えてしまって眠れなかったらどうしようかと心配したけど、全く問題はなかった。

いつものように叶に啼かされて。夢見ることもなく深い眠りに堕ちていたから。
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