京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
思い出す
また、夢を見ていた。


でもそれは前回よりももっとリアルな夢で、周囲にはちゃんと景色が広がっていた。


ここは遊園地だ。


黒田と何度か来たことのある遊園地。


そして今も春菜の隣には黒田の姿があった。


あぁ、そうだ。


これは付き合って1年目の記念日だっけ。


春菜と黒田の前には小さなケーキが置かれていて、その真ん中にはこの遊園地のイメージキャラクターであるウサギが印刷されたクッキーが乗っている。


レストランの中は他にも沢山のカップルや家族連れがいて、騒がしい。


1年目の記念日なんだから一緒にケーキを頼もうよ。


春菜は自分がそう言ったことを思い出してした。


だけど黒田は首を縦には振らなかったのだ。


『春菜だけ食べなよ』


その時ななにも感じなかったけれど、あのときすでに黒田の気持ちは決まっていたのだ。


春菜と別れて、別の子と付き合おうと。


実際に春菜はこのケーキを食べ終えた後に黒田に振られたのだ。


記念にと思って食べたケーキの後に。
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