社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「今日の夜、お互いの両親を交えた食事会があるの。あなたに勝ち目はないわね」
「食事会……」

 食事会すら、要人の罠ではないかと疑ってしまう。

「わかる? 倉地さんと私じゃ扱いが違うのよ。私は宮ノ入グループの会長から、要人さんを紹介されたの。いわば、会社公認。あなたはただの遊び相手よ」
「要人の遊び相手? それは愛弓さんたちのほうじゃ……」
「身の程がわからない人ね。遊ばれているのは、あなたよ。今後、要人さんに近づかないでね!」

 愛弓さんは言いたいことだけ言って、倉庫から出ていった。
 私を倉庫掃除に付き合わせたのは、要人のことをあれこれ私に、言うためだったらしい。
 愛弓さんと要人のお見合いは仕組まれたものだ。
 きっと宮ノ入も絡んでいる。
 私が口を挟むのはよくない。
 ここは黙って、成り行きを見守るのが正解だ。
 愛弓さんがいなくなった後も倉庫の片付けを続けていると、誰かやってきた。

「志茉」

 振り返ると、宮ノ入本社に行っているはずの要人がいた。
 そして、険しい表情をしている。

「私がここにいるって、よくわかったわね」
「受付の葉山(はやま)から、戻った時に聞いた」
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