西岡三兄弟の異常な執着
相愛
広い廊下で小柄な花苗を少し見下ろして、杉尾が語りだした。

「私は昔、ホステスの仕事してたんです。
若様の席によくついてました。
その時から、若様に恋をしてて……
でもあの方がキレた姿を見て、あまりにも恐ろしくて辞めたんです。
でも…やっぱり若様に会いたくて、秘書の仕事の勉強をして西岡電力に就職したんです」

「杉尾さんは…まだ、朱雀のこと……」
「好きでした。
でも……“あの”若様を見て、正直…退いてしまって……だから不思議なんです。
花苗様のような純粋でお優しい方がなぜ、あの方の奥様なのか。
それが知りたかったのと、ただ純粋に若様に会いたかったってだけです。
だから、安心されてください」

「安心……」
でも花苗にはわかった。
この目はまだ……朱雀に恋をしていると。

「……っつ…」
思わず、胸元をギュッと握りしめた。

花苗は“初めて”嫉妬していた。

物心ついた時から、西岡三兄弟や紫苑といつも一緒にいて、紫苑を好きになり自然に恋人同士になった。
その間紫苑は、一途に花苗を想ってくれていた。
だから紫苑と付き合っていて、不安になることも嫉妬することもなかった。

そしてそれは、朱雀と付き合うようになって結婚してからもそうだ。
朱雀は紫苑よりも、一途に真っ直ぐ…ある意味花苗“しか”見えてないくらい、花苗を想い尽くしてくれる。
だから花苗にとって、嫉妬をするなんて皆無だった。

杉尾の話を聞いていると、本当の朱雀のことを何も知らないと言われているようで苦しいのだ。

「すみません、引き止めてこんなお話……」
何も発しない花苗に、杉尾が言って去ろうとする。

「やめてください…」
「え…?」
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