スパダリ外交官からの攫われ婚
「見かけによらずお節介なんですね、加瀬さんって」
「そっちは見かけ通り、親の言いなりなんだな。今の俺に対してみたいに言いたいことを言えばいいのに」
八つ当たりだと分かっていても琴は加瀬への言葉を止められない。加瀬が余計な事を言わなければ何も知らないままでいれた、そんな風に考えてしまう。
そんな琴に加瀬は苛立つ様子もみせず、冷静に返してくる。
「簡単に言わないでください、私だってこの家族と良い関係でいたいから……」
「良い関係? あんたの意思と関係なく見合いを進める両親や姉たちとの間に、そんなのが築けているとは思えないが?」
琴が気にしていることを加瀬は遠慮することなく、言葉にしてしまう。ナイフで胸をえぐるような加瀬の遠慮なさに、琴は苛立ちと悲しみを抑えきれなくなっていった。
「加瀬さんに何が分かるんです? 母との思い出のこの場所まで奪われたら、私はどこにも居場所なんてなくなるのに……!」
そう強く言った瞬間、琴の瞳からポロリと涙がこぼれた。そんな琴を気にした様子もなく加瀬は彼女にこう言った。
「……俺があんたを攫ってやると言ったら?」