スパダリ外交官からの攫われ婚
これ以上はどうにも出来ず、琴は加瀬に着替えが済んだと声をかけた。
リビングに戻ってきた加瀬は琴の格好を見て少し顔を逸らしてしまったが、琴も自分の姿がみっともないことは自覚していたので文句は言えなかった。
「その恰好じゃ外には出られないな、あんたは買い物に行きたいだろうが今日は我慢してくれ」
「そうですね、明日になれば洗濯した服も乾くでしょうし……」
とにかく着る服が無ければ外に出ることは出来ない。こんな格好で完璧な容姿の加瀬の隣など歩けるわけもなく……
「近くのショップでいくつか選んで来るから、サイズをメモしておけ。下着もな」
「し、下着もですか!? いいです、それは自分で……!」
女性としてはイマイチ魅力的ではないと思っている、そんな自分の下着のサイズを加瀬に知られるなんて琴には考えられなかった。
加瀬は女性の裸など見慣れているのかもしれないが、琴はそうではないのだ。それなのに加瀬は……
「まさかあんたは下着も付けずに外に出るつもりなのか? 俺がそんな事を許すとでも?」
ドスのきいた声でそう言われて、琴は驚いて後退ってしまう。何がそんなに彼を不機嫌にさせてしまったのか、と。