強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
恋を見つめる場所
 四日目となる朝は慌ただしかった。


 比較的早めの朝食を終えたころ、ケントのスマホが鳴る。

「どうしたカテリーナ?」

 相手がカテリーナさんの様だったから、きっと仕事の話だろう。

 そう思って、私はとりあえず部屋を出る準備をしていた。


「perché l'hai fatto!?」

 突然、電話をしているケントの声が驚きと焦りを含んだ声になる。

 イタリア語だから分からないけれど、何か問題が起こったみたいだ。


 どうしたんだろう?
 大丈夫なのかな?


 少し心配にはなるけれど、私が何か出来るわけでもない。

 準備を進めながら電話が終わるのを待った。


「依子、すまない。ちょっとトラブルが起きて……俺が行かなきゃ収集付きそうにないんだ」

 電話を終えると同時に申し訳なさそうな顔でそう伝えてくるケントに、私は「仕方ないよ」と首を横に振った。


 一緒に行動するのはケントのわがままだけれど、彼に仕事を放り出してほしいわけじゃない。

 でも……。


「でも、私はどうすればいい?」

 ケントについて行けばいいのか。
 それとも一人でミラノに向かえばいいのか。

 後者は不安があるけれど、タクシーなどを使えれば何とかなるかもしれない。
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