強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
恋と決別する場所
 ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガレリア。

 1870年代に完成されたアーケード街。

 石造りのこの街は、伝統と近代が合わさったとても美しい通りとなっている。


 ガラス天井に、フレスコ画。
 床にはモザイク画があったりと、芸術的にも素敵だ。

 床の雄牛のモザイク画は、局部に片足のかかとを乗せて三回転すると願いが叶うなんて言い伝えもあるせいか、その部分だけへこんでいた。


 ブランド店も多く、プラダ本店があることでも有名。

 あの赤が目立つハンバーガーチェーン店まで雰囲気に合わせて黒になっているのは、軽い驚きと共に納得もあった。

 この雰囲気に赤は合わないもんね。


 同僚の一人に、「ガレリアも行くなら是非ともプラダ本店でこれを買ってきて!」とお金と共に強くお願いされた。

 ガレリアに来なきゃいけなかった理由はその同僚が一番の原因かもしれない。


「土産だけ買うのか? 依子も買ったらどうだ? 日本で買うより安いぞ?」

 私の買い物を見ていたケントがそう口を出してくる。

「バッグはどうだ? 今の格好にも合うのがあると思うぞ?」

「バッグ、ですか……」

 呟きながら私は今日の格好を見る。
< 144 / 183 >

この作品をシェア

pagetop