強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
観光契約
　訳が分からないまま、近くのバールに連れてこられ共にカッフェを飲み交わすことになってしまった。

　イタリアのBARと書かれた場所はバールと言って、基本的にカッフェと呼ばれるエスプレッソを飲む場所だ。
　イタリアには至る所にある。

　サッと入ってサッと飲んで出て行く様な場所なので、あまり込み入った話をするのには向かない場所なのだけど……。


「あの、私を探してたんですか？　別に逃げたつもりは無かったんですけど……？」

　というか、探される理由がまず分からない。

　私と彼の関係はあの一夜――正確には一夜と朝のひと時。
　あの時だけの関係のはずだ。

　もう人生の中で交わる事はないはずの相手。


　なのにケントは私を追いかけて来た。

　どうして？


「まず誤解させてしまった様だからな、それを謝りたい」
「誤解？」

　誤解する様な事があっただろうか？


「カテリーナから聞いた。お前を朝に抱いたのは寝ぼけていたからだと思われていると」
「なっ！？」

　こんな公共の場でしかも真昼間に何を言い出すのかと思った。

　でも、周囲に日本語を理解できる人はいない。
　むしろ近くにいた人にいぶかしんで見られてしまった。

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