ちょうどいいので結婚します
第2話 同じ気持ち
 ――功至は、今の会社に来た頃から親に見合いを勧められるようになった。独立をする前に相手を見つけ、落ち着いた方がいいという助言だった。

 年齢的に早いと思ってはいたが、家庭を持つことを見込んだ方が独立してからの採算も考えやすくはあった。悪い話ではない。ただ、相手は見合いより自分で見つけたかった。

 一度だけ、勇太郎の勧める相手と見合いをした。だが、直ぐに断わった。知り合いの女性が自分の父親というツテを使って、勇太郎に頼み見合いに持ち込んだのだ。親の力を使って近づこうとし、すっかりその気でベタベタしてくる態度に不快感を覚えた。知り合いなら自力で何とかすればいいのに。やり口が気に入らなかった。

 その後もしばらく執着されたが、いずれ疎遠になった。それからは、千幸のことで頭がいっぱいになり見合いどころではなかった。

 ところが、懲りもせず勇太郎が話を持ち出して来た時は帰ろうと思ったぐらいだったが、状況は違った。

「お前は、小宮山千幸さんをどう思う?」

どう、思う?そりゃ可愛くて、この上なく良く思っている。が、なぜ彼女の話が……功至は見合い話と千幸の名前が結びつかなかった。

「彼女と結婚する気はないか?」

 むしろ、彼女としか結婚したくないくらいだが。混乱していると、勇太郎はさらに信じられない事を言った。

「いや、向こうも乗り気でな。もう承諾を得ている」

 勇太郎は偶然、千幸の父親、つまり社長と唯一無二の親友になったらしい。以前は知り合いだと言っていたのに随分と関係が進んでいることに驚いたが、敢えて触れることはしなかった。

 彼女が、彼女が、彼女が……『乗り気』?功至は天にも昇る気持ちだった。

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