ちょうどいいので結婚します
第4話 ゆるくつなぐ
「ごめんね、良ちゃん」
 千幸は良一に申し訳なく思い、眉を下げて謝罪した。良一は咲由美に勝手に取り付けられた約束に不服そうにしていたが、千幸の顔を見るとその気持ちも薄れたらしい。

 ため息一つつくと、いつものように「仕方ないな、ちーは」と笑った。

「本人に聞けばいいと思うんだけど、無理だよな」
 と自己完結した。

「出来上がりを見せたいなって」
「あー、なるほど。んじゃ、過程は俺が引き受けようか」
「よろしくお願い致します」
「言っておくけど、俺の趣味に偏るから」
「へえ、良ちゃんの好みってどんなんだろう」
 千幸は選んだ服を客観的に見てくれる人が欲しかった。その点、良一は間違いなかった。

「俺はねえ、スカートよりパンツが好きかな。それで格好いい色気がある人」
「ああ、良ちゃんはわかるなあ。格好いい女の人。やっぱりさ、普通の男性じゃなかなか手を出せないようなと素敵な人に果敢に挑戦しそう」
「……果敢とか言うなよ」
「はは、でもさ、自分に自信のない人はそんな女性は避けるし。やっぱり良ちゃんらしいって思う。でも、今日はスカートがいいなあ」
「そうだな。あの男……」
「あの男? 良ちゃん結構口悪いね」

 良一は苦笑いした。
「かもな。どうもちーの相手だと意地悪な目で見てしまうな。俺は向こうの男には情も何もないから」

 良一と功至が顔を合わせたのはほんの一瞬、一度だけだった。
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