記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
未来
「何かあったら必ず連絡すること。遠慮しないでなんでもいいから。携帯がつながらない時は医局に連絡して。その時に言う言葉、覚えた?」
身支度を整えた紫苑が玄関の扉の前で私に何度も何度も同じことを確認する。
「覚えた。大丈夫。」
私の言葉に紫苑は頷く。
「無理はしないこと。家事なんてやらなくていいから安静にしてて。それから必要なものがあったら帰りに買ってくるから、メールして。ひとりで」
「でかけない」
言葉の途中で私が話すと、彼は深く頷いた。

昨日から何度も何度も同じ内容のことを確認されている私はすっかり言葉を覚えた。

今日から仕事に出勤する紫苑。
家にのこす私が心配らしい。

夕べは遅くまでキッチンに立ち、紫苑が不在の間、私がつわりがひどくなったり、体調が悪くなっても簡単に食べられるようにと何やら調理してくれていた。
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