極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~

2.甘すぎるシーデイのはじまり

 エレベーターのドアが目の前で開く。
 わたしたちはグランドスイートを出て、最上階へ向かっていた。どこから行くか迷ったんだけど、まずは一番上から見学しようと思って。

「これからシーデイが続くが、セレブリティクイーンでは気ままに寛いだりイベントを楽しんだり、ゲストが思い思いに過ごせるように考えられている」
「シーデイ?」
「終日航海日のことをクルーズ用語ではシーデイとかアットシーなどと呼ぶんだ」

 シーデイ。海の一日。
 そうよね、セレブリティクイーンはサウサンプトンからニューヨークまで直行だ。寄港地がない。
 毎日が航海日となる。

「寄港地の多いクルーズ旅行だと、シーデイは休養日であり船自体を楽しむ日ともなる。船内イベントや習い事の教室が開かれたりする」
「朝の船内新聞でヨガやクラフト教室のお知らせがありましたね」
「ああ。船の性質上、にぎやかなイベントよりも落ち着いた大人向けの行事が多い」
「昔も……」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、なんでもないです」

 つい思い出にひたりそうになってしまって頭を振った。
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