second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
【Tachibana side 5: 信頼している人からのアドバイスは苦い味】


【Tachibana side 5: 信頼している人からのアドバイスは苦い味】


俺がERで診察・処置したまきちゃんがお母さんと手を繋いで楽しそうに帰っていく姿を緩んだ顔で見守っていた俺に声をかけてきたのは

「てっきり橘先生はクリスマスイヴの夜をプライベートで楽しんでいらっしゃると思っていました。」

『いえ。今日は当直ですから。』


ER(救命救急センター)の若手女性看護師の上野さん。
業務は一応ちゃんとやってくれる人だけど、業務に関係ないことを話してくることも多く、どちらかといえば絡みたくない人。


「クリスマスイヴにこうやって橘先生とお仕事できるなんて光栄です!」

『・・・ありがとうございます。』


光栄か・・・
今の俺はそんなことを言ってもらえるような人間じゃない
奥野さんに自分勝手にキスする・・・とか
仕事してさらに冷静になると、とんでもないことをしたような気がしてくる


「あの~お仕事終わったら、一緒に・・・」

『・・・さっきドクターカーで運ばれてきたお子さんの経過を見なきゃいけないので・・・』

そんな状態の俺だから、緊張感が必要なはずの救命救急センター若手女性看護師からの、その言葉に素っ気ない返事しかできない。


「それが終わるまで待っています!」

『すみません・・・俺、そういうの、受けないことにしたんです。』

「なんでですか?今まではそんなことおっしゃったことないのに・・」


はっきり断ったのに、それでも引き下がろうとする彼女。
研修医時代の俺だったら、こういう誘いも病院スタッフとのコミュニケーションも大事な仕事と割り切って付き合ってきた。


でも、今の、一人前に仕事ができるようになったはずの俺なのに、

『誤解されたくない女性がいるんです。』

コミュニケーションという大切な仕事ができなくなった。
学生時代には、彼女の傍にいた人に勝ち目がない・・・そう想って諦めていたのに、数年前、自分が勤務するこの病院へ異動してきたその人のせいで。


「誤解させちゃおうかな~その女性を。」

そう言いながらとうとう俺の腕に擦り寄ってきた上野さん。
腕に彼女の胸が当たっていることを感じ取った俺はすぐさま自分の腕を掴んでいる彼女の手から引き抜く。

『業務中です。上野さん。業務に戻って下さい。』

そして、命を守るという役割を担っている同じ立場にいる人間として、毅然とした態度で彼女を叱責した。


それでも、笑っているめげない上野さん。

「業務に戻りま~す。でもあたしは諦めません!!!!誤解させることも、橘先生のことも!」


これ以上彼女に何を言っても無駄だと思った俺は

『・・・俺が誤解させませんから。ご自由にどうぞ。』

ERという緊張感と集中力を決して切らしてはいけない場所で冷静さを失ってはいけないと自分に言い聞かせながら、彼女にそう言い捨ててERを後にした。

そしてようやく経過が気になっていたドクターカーで搬送したベビーのいるNICUへ向かった。



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