second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
【Okuno side 8:特別な場所に座る戸惑い初詣】
【Okuno side 8:特別な場所に座る戸惑い初詣】
お互いに当直を終えて、橘クンのクルマで初詣に出かけることになった。
職員通用口付近で彼が来るのを待ってみた。
けれども、夜勤を終えた看護師さん達が退勤してきたこともあり、彼のクルマが通ることが予想される交差点付近まで歩いた。
病院内で一番有名人であろう彼と出かけるところをその人達に目撃されることだけは避けたかったから。
『駅と反対方向なら、そんなに目立たないよね・・・電話で居場所、教えたほうがいいかな?でも、まだこっちに向かってるとこかな?』
いつもの当直明けとは異なる朝。
いつもの、勤務中の緊張感から解放されて軽い足取りで家路につく朝とは異なって、いつもと異なる緊張感が続いている。
『大須観音なら、結構近いよね。』
誰もいない場所で橘クンを待ちながら、初詣先を勝手に想像する
うちの病院は名古屋城の北側に位置しており、クルマで南下すれば大須観音はそんなに遠くない
それにあたしは毎年、勤務がないお正月には大須観音へ初詣に行っている
『さらっと行って、すぐ帰る・・・よね・・・』
昨晩、ERに橘クンがいた
その後もERに小児患者が来院していたら橘クンも対応していたかもしれない
だとしたら、昨晩、あまり眠っていないはず
当直明けだからすぐ帰る・・で間違っていないはず
『そろそろ電話で居場所、教えてあげないと・・・』
あたしはそう言いながらスマホで橘クンにコールをする。
風を遮る建物がない場所で立っていたあたしは、吹き付ける風に肩を震わせながら彼が電話に出るのを待っていると、自分がいる場所にクルマが近づいてくる気配を感じた。
そのクルマはボルドーレッドカラーのオシャレなSUV車。
ドライバーはサングラスをかけている男性。
遠目でわかったのはそれぐらい。
そしてそのクルマは明らかに減速し、とうとうあたしの前で止まった。
「奥野さん、おはようございます。」
『・・・橘クン!!!』
窓を開けて話しかけてきたクルマのドライバーはあたしが電話で自分の居場所を伝えなくてはいけなかった相手。
その彼が電話に出る前にあたしを見つけてくれたことに驚いてしまう。
それでも、彼はいつもの爽やかな表情であたしにクルマに乗るように勧めてくれる。
あたしは居場所を連絡できなかったことを申し訳なく思いながら、後部座席のドアを開けようとすると、彼に助手席に座るように勧められ困惑する。