偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「いきなり小鳥遊の養子なんて、大変だぞ」
「そうか?苗字が変わって、住む家が広くなるだけだろう」
特別大きな変化はないように思うが。

「周りの態度がコロッと変わるぞ」
「ふーん」
そんなものかなあ。

「良くも悪くも人が寄って来るし、今までとは手のひらを返したように持ち上げてくる」
「へー、仕事がしやすそうでいいじゃないか」
御曹司として扱われている太郎に意地悪を言ったのではなく、冗談で流したつもりだった。

「ふざけるなっ」
普段温厚な太郎にしては珍しく強い言葉。

「冗談だよ。俺だって覚悟はしている」
「本当か?」
「ああ」

太郎はとても腕のいい小児科医だ。
患者にも人気があるし、スタッフからの信頼も厚い。
それでも、「高城の坊ちゃん」とか、「高城小児科の太郎君」なんて呼ぶ人間はいる。
どれだけ腕も磨いても「さすがは高城の坊ちゃん」で終わりだし、高城小児科の息子だからできて当たり前って目で見られることも少なくない。
きっと生き難いんだろうなと思ってずっと見ていた。
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