初めて真紘さんと結ばれてから一カ月が経った。

 私と雨音さんは秘書の仕事をすることに決め、来月の頭に辞令も出る。

 まだ全面的に受付をテンマくんに任せたわけではないが、徐々に受付に立つ回数を減らし、その時間で研修を受けたり、先輩秘書に同行して取引先に顔を覚えてもらったりしている。

 毎日慌ただしいけれど、常務に言われていた通り受付で培ったスキルが役立ちそうだし、指導してくれる秘書課の先輩も優しく、以前のような不安はほとんどない。

 しかし、雨音さんの方はまったくの逆で、気が重くなる一方なのだそう。専務の専属秘書には、相当な苦労があるらしい。

 前に約束していた真紘さんとの食事会が金曜の夜にあるので、その時に雨音さんの愚痴を聞かせてもらう約束をして、当日を迎えた。


「はじめまして、榎本です」
「柳澤です。佳乃がいつもお世話になっています」
「いえ、佳乃ちゃんはしっかり者なので、私の方が助けられてますよ」

 私たちがいるのは、スタイリッシュなイタリアンレストラン。お店を選んだのは真紘さんで、ラクレットチーズが自慢の人気店だ。週末とあって、席はほとんど埋まっている。