きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
人助け
     *

見慣れない景色を車窓から眺める。
暗闇の中で輝く街灯は、冬に近くの家で飾られているシンプルなイルミネーションを思い出させた。

「悠斗、彼女が出来たんだって」

昼休み、バスケ部の奴らと昼飯を食って食堂から帰る途中、高橋を見つけた。
すごい勢いで走って来るもんやから「何かあったんかな」と思って呼び止めてみると、思わず声を失った。

だって、あいつのこんな顔、見たことなかったから。

すぐにわかった。宇山と何かあったんかなって。

だってあいつのこと、こんな顔にさせられるの、宇山しかおらんし。


あいつはきっと笑ったつもりやったんやろうな。
俺には、泣いているようにしか見えへんかったけど。


あいつの宇山に向ける笑顔はいつも真っ直ぐで、だから自嘲気味に笑うあいつの笑顔を見た時、自分でもわからんぐらい胸が痛くなった。

「こんな顔見たく無い」って思った。

そして気が付けば口にしていた。


“俺と付き合ってみる?”


「あー、もう、俺、何を言ったんやろ。恥ずかし」

自分の中ではとどめられず、思わず口に出してしまう。

ハッと口を押さえるも、電車の揺れる音にかき消されて周囲の人には聞こえていなかったようで、少しだけホッとした。

別に高橋のこと、好きじゃないのに。

そもそも恋愛自体に興味がないし。


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