きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
困ったときは、お互い様
【日曜日、どこか行きたい場所ある?】

【うーん、強いて言えば、最近学校の最寄り駅の近くにできたハワイ料理のお店かな。ロコモコがとっても美味しいんだって!】

【了解。じゃあ、お昼はそこ行こか】

学校の最寄り駅にあると言っているのに、わざわざ「迎えに行く」という彼を止めた私は、前日、彼と交わしたやりとりを見直しながら、部活を終えてやってくる宮本くんを駅で待つ。

「まさか、宮本くんにお誕生日を祝ってもらえるとはなあ……」

一体どういう風の吹き回しだろう。

“近づくな”とわざわざ自分から言った相手に休日を費やし、なんならお誕生日のお祝いまでしてくれるとは。それほど、私はあの日、絶望した顔をしていたのかな。

まあ、していただろうな。少なからず、思い出せる限りでは一番ショックな出来事だったし。


トーク画面の一覧に戻ると、昨日悠斗がくれたメッセージが目に入る。

【誕生日、おめでとう。今晩、家行く】

嬉しいような、悲しいような、誕生日当日、最初にお祝いの連絡をくれたのは悠斗だった。それも、日付が変わった0時ちょうどに。

「こういうところ、律儀なんだから」

いつもは必要最低限しかスマートフォンをみないくせに。

いっそのこと私の誕生日を忘れてくれていたら、きっぱり諦めきれるのにな。

昨日変えたばかりのスマートフォンケースを見ながらため息をつきながら、昨晩のことを思い出す。


「真凛、入るぞ」

宣言通り、部活が終わってから悠斗は家に来てくれた。

「……うん」

来てくれることは予想していた。毎年、どれだけ部活が遅くなっても必ず誕生日の日は来てくれていたから。

来てくれたことは嬉しい。でも、悠斗に会うのは少し辛い。

”幼馴染”として”普通”に振る舞えるかな。

嬉しさよりも不安を抱えながら返事をすると、ジャージを来た悠斗が手に紙袋を持ちながら部屋に入ってきた。

「悪い、遅くなった」

「ううん、わざわざありがとう」

「はい、これ。誕生日おめでとう」

座っていたベッドから立ち上がり、差し出された紙袋を受け取る。

袋をあけなくても中身はわかっている。

小さい時からお気に入りの、駅前にあるケーキ屋さんのチョコレートケーキ。


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