幼なじみの一途な狂愛
不倫の代償
「乙哉。
来たよ、和多“元”課長」

パソコンに向かっていた、乙哉。
目だけスグルを見た。

「ん。すぐ行く」

会社地下の、小さな部屋。
ソファとテーブルだけしかないこの空間に、和多が待っていた。

向かいのソファに乙哉も座り、足を組んだ。
ソファの後ろにスグルが控える。

乙哉は、無表情・無言でただジッと、和多を見つめていた。

「何?」
和多が口を開く。
「………」
乙哉は何も答えない。

更に乙哉にただジッと見つめられ、和多は思わず視線をそらした。

「目」
「え?」
「俺から目をそらすなよ」
やっと、乙哉が口をきいた。

「は?」

「もう少し、お前の顔……目に焼きつけておきたい」

「どうして?」

「俺の命よりも大切な女を、弄んだから」

「え?」

「お前のその……最低・最悪なクズの顔、焼きつけておきたい」
一切……和多から目をそらさず、言いきる乙哉。


「…………用件を、教えてくれ」

「ネット見た?」
「━━━━━━!!!?」
乙哉の言葉に、驚愕する和多。

「その情報流したの、この“俺”」

「君が……!?なぜ!?」

「なぜ?
お前、クズな上に無能なんだな?」
「は?」
「わかんねぇの?」

「君……月乃(つきの)の知り合い?」

「違う」
「は?」
「もう一人、いるだろ?
お前が、弄んだ女は」

「梨々香か…」

「梨々の名前を気安く呼ぶな!!!」

「君は、梨々香……いや、石蔵くんの何なんだ?」

「クズには言いたくない」

「そう…
石蔵くんには、好きな男がいるよ」

「は?」

「僕は、彼女の安定剤みたいな存在だったから。
石蔵くんは、寂しさを埋める為に僕の誘いを受け入れてたんだよ。
その好きな男の代わりに、彼女は僕と不倫してたんだ。
………………でも、僕は石蔵くんが好きだった。
でも、どうしても妻と別れられなくて……」

「梨々が、言ったの?
好きな男がいるって」

「彼女はそんなこと言わない。
僕は石蔵くんが好きだったって言ったろ?
彼女を見てたらわかる。
あぁ……僕のことを見てないって。
それに最後……彼女に、終わりにしてくれって言われた日。
彼女は、男の名前を呟いてた……」

「誰の…名前……?」


「僕に抱かれながら、僕の腕の中で“おとや”って」


「え……梨々、が……?」

「知ってる?
石蔵くんとの関係は、一年くらいだったけど……
その間彼女は……僕に抱かれてる時、一度も僕の名前を呼んでくれなかった。
たった、一度も……!
その彼女が、最後の日だけ名前を呼んだ。
僕じゃない男の名を………
自業自得だけど、あれは傷ついたなぁー」
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