幼なじみの一途な狂愛
ただ…一緒にいたい
光昭にあんな恐ろしい乙哉の姿を聞かされたのに、それでも梨々香は乙哉から放れられずにいた。


【でも、大丈夫だよ!
乙哉は、恐ろしい奴だけど……梨々ちゃんへの気持ちは純粋な愛情だから】
と、最後に光昭が言っていた。



そんな時だった━━━━━━━━━

梨々香のアパートに、呼び鈴が響く。
「はい」
「大家の黄木です」
「あ、はーい!」
玄関を開ける。

「石蔵さん。急な話なんだけど━━━━━━」


━━━━━━━━━━━━━━━━
「梨々、お疲れ!」
「お疲れ!」
週末。乙哉に食事に誘われ、梨々香の職場まで迎えに来ていた。

「梨々、何食べたい?」
「んー、パスタは?」
「ん。じゃあ…イタ飯屋だな!」

「ん!美味しっ!!」
「まぁまぁだな!」
「まぁまぁって……失礼だよ(笑)」
「だって、俺が作った方が旨く作れるもん!」

「そんなことある……か!乙哉、料理上手だもんね!」
「あるよ!今度、作ってやる!!」
「うん!」


「梨々、今日泊まってかない?」
「あ、ごめんね、今日は……」
「えー!!なんでー!」
「明日、朝からバタバタだから」
「ん?まさか、仕事?」
「ううん。部屋探さなきゃなの」

「は?部屋?」

「うん。立ち退くように、言われちゃって…」
「なんで!?」
「アパート、取り壊すんだって!
でね。来月までに引っ越さなきゃいけないの」

「だったら……」
「ん?」

「一緒に暮らそ?」

「え……」
「そうなんだぁー!嬉しいー!
そうゆうことなら、決まりだな!!
明日、引っ越しね!!」

「へ!!?」

「スグル達に手伝わせたら、梨々一人分の荷物くらいすぐだろ?」

「いや…私まだ、乙哉のマンションに引っ越すって言ってない……」

「とりあえず、今日は俺ん家に泊まって……
で!明日朝に、アパートにスグル達と集合にしよ!」

「ちょっ……待っ━━━━━」
「待ってね!今、スグル達に連絡するからね!」
そう言って、乙哉がスマホをポケットから取り出す。

「乙哉!!」
「ん?なぁに?」

「待ってよ!!私、一言も引っ越すって言ってないよ!」
「なんで?」
「なんでって……」
「傍にいて?」
「乙哉…」
「わざわざ探す必要ないじゃん!」
「でも、私達まだ……」

「梨々の気持ち固まるまでは、手は出さない」

「乙…哉…」

乙哉が、ゆっくり梨々香に近づく。
そして梨々香を抱き締め、梨々香の肩に顔を埋め呟いた。
「俺はただ……梨々と一緒にいたいだけなんだ……」
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