ずっと探していた人は
「無理」

「ええええ?? どうしてだよっ!!」

「ちょっと、声大きいから!」

教室にいたみんなが徹の大声に驚いてこっちを見たのに気づき、思わず私はたしなめた。

「なんで無理なんだよ」

拗ねた徹を、私は軽くにらむ。

「まず、どうして私なの」

「だって成績良くて、こんなお願い聞いてくれるの、加恋しかいないじゃん」

「野球部の仲間はに頼めばいいじゃん」

「みんな自分の勉強で精一杯だから、だめ」

はーっ、と私は徹に見せつけるように長い溜息をついた。

「絶対嫌だ」

「だから、どうしてだよう」

「だって徹さ、高校入ってまともに勉強してないでしょ?」

高校に入学してから1年少し。

徹のお母さんが会う度に、徹が野球ばっかりで全く勉強しないことを嘆いていたことを思い出す。

徹に勉強を教えるほど大変なことって、きっと他にはない。

「だって野球で精一杯なんだもん。毎日朝練も放課後練もしてさ、勉強する暇なんてないんだよ」

頼むよ~と訴える徹を、無理だよ、と突き放した。

「私だって人を教えられるほど、賢くないし」

「けど、1年の時の学年末テストは、お前クラスで3番だったじゃん」

お前のおばさん、この前言ってたぜ、と徹が付け加える。

「え、そうなの?! 加恋賢いじゃん!!」

横から入ってきた由夢を、私はとりあえず放置する。

「それは高校1年生の頃の話でしょ。2年生になってからは私も勉強苦戦しているし、無理だって」

「そんなこと言うなよ~、加恋、お願いだってば」

中間テストまでの2週間だけでいいからさ、そういいながら泣きそうな顔で徹が頼み込む。

「だから、ダメだってば……」

徹のショックを受けた表情に、私は少し動揺する。

「加恋、俺今本当にピンチなんだって……」

徹がうつむく。

「俺が野球頑張っているの一番知っているの、加恋じゃんか……」

徹が私の様子を伺うように上目遣いで私を見る。

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