『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
杉原敬の事情
side 敬

日付は2月15日に移った。
明日、いや日付が変わったんだから、今日は週末でバレンタインデーなんてイベントの後だからいつもより忙しくなりそうな土曜日。
救命医の俺は当然のように出勤しなくてはいけない。

「痛て」
スペースの半分を占領されたベットの上で体を動かそうとしたら、腕がしびれていた。

身動きせずに眠ったせいか、体の節々も痛い。
こんな窮屈な体勢で眠っていて真理愛は大丈夫だろうか?
体半分起こして、横に眠る少女を見下ろした。

「おーおー、かわいい顔をして」

よく見れば透き通るような白い肌で、ほんのり色づいた頬とぷっくりとした唇が存在感を出している。
かわいいな。
綺麗と言うよりもかわいい部類に入るだろう美少女。

病院で初めて会った時は一人の患者としか見ていなかった。
その後街で偶然再会し、お金を貸してほしいと言われて驚いた。
遅い時間に一人で街にいるなんて遊んでいる子かなとも思ったが、話してみると印象が違って興味を持った。
今思えば、病院で会った時に自分の保護者を「ママの旦那さん」なんて呼んだ彼女が気になっていたのかもしれない。

「うぅーん」
寝返りを打ちながら、顔にできたかすり傷が枕に当たるたびに眉間にしわを寄せる真理愛。

顔と手の傷も足の捻挫もたいしたことはない。
数日すればきれいに治るだろうと思う。
でもなあ・・・

無邪気に眠る真理愛の寝顔を見ながら、俺は複雑な気持ちになっていた。
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