財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
三、愛への変化[一樹SIDE]
 親友の慎一が五年前に病気で亡くなってから、俺には成長を見守る女の子がいる。慎一とは中学、高校、学部は違うが大学まで一緒で、俺たちの性格は異なっていたが気の合う幼馴染だった。

 彼は将来名雪流の家元になるはずで、突然の他界に、妹の紗世は大変な思いをしただろう。家元の母親は次期家元になる慎一にかなりの期待をしていたので、相当ショックな様子だった。

 兄亡き後、重責を背負うことになった紗世は、大学に通いながら名雪流の事務所で働き、自由時間はほとんどない生活だ。

 慎一の代わりに年数回食事に連れ出していたが、大学生になった紗世を妹ではなく女性として見始めていることに気づいた。

 だが俺は海外出張が多く、私的なことにあまり時間を取れずにいた。

 早いもので紗世はもう大学を卒業する。近いうちに食事に誘って卒業を祝おうと考えていた矢先、海外転勤が決まった。

 京極ホールディングスのロサアンゼルス支社の最高財務責任者として、三年間出向する。

 いずれは世界の主要都市にあるどこかの支社へ出向する予定だったが、ロスの最高財務責任者が急病で退職することになり、経営戦略室で勤める傍ら専務取締役も兼任していた俺に辞令が下された。

 社長である父から打診されたとき、脳裏によぎったのは紗世のことだ。これから彼女に付き合いを申し込もうと思っていたのだ。俺を兄として見られなくても、強引にアプローチするつもりで。
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