儚く甘い
「遅れんぞ」
立ち止まったまま、背を向けてみわが追い付くのを待つ達哉。
「うんっ!」
一瞬で笑顔に戻るみわが満面の笑みで達哉に駆け寄る。

「犬かお前は」
”待て”を解かれた犬のようなみわに、ふっと笑う達哉。

こうして話をするようになってから、達哉の笑顔がどれだけ貴重かわかったみわ。
まるでくじに当たったかのような感覚に、うれしさは募る。

講堂の中、当たり前のように達哉の隣に座るみわ。
「これ」
「ん?」
「お腹、すいてない?」
そう言って達哉にみわが差し出したのはざらめのついたいかにも甘そうな大きな飴。
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