好きだけど、好きなのに、好きだから

*初めての感覚

二人のやり取りを眺めていた俺の隣には、いつの間にか麻衣先輩がいた。

「佐伯~」

ニヤニヤとして、俺を見上げてくる。

「うっす」

「優里亜先輩のこと気になるんでしょ?」

「別に……」

「ふーん。あんたも相変わらず、ひねくれてるわね」

俺を肘で小突く。

「なんっすか」

「ジャージ掛けてあげたの、本当はあんたが先輩のこと心配だったんでしょ?」

だったら何?

「素直にそう言えばいいのに」

言う必要なんてねぇし。

「……」

黙った俺に麻衣先輩は続ける。

「優里亜先輩ね、嬉しかったみたいよ。ジャージ掛けてくれたこと」
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