望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
6.真誠
「アディ。なぜそのような姿をあの女に見せている」
 先ほどまで彼女が座っていた場所に、レイモンドは腰をおろした。そして彼の膝の上には先ほどの豹の頭が乗っている。気持ちよさそうにその頭を預けているように見える。
 後ろの噴水は勢いよく水を吐き、コポコポと音を立てながら流れている。その水音も心地よい。ずっと耳にしていたくなる穏やかな音。
 だからレイモンドにとって、ここは安らぎの場所。

 だからこそ、その場所にあの女がいたことということが少し腹立たしい。
 さらに、この姿のこの弟を膝に抱いていたという事実も、腹の底がむかむかとしてくる原因の一つでもある。

「義姉さんは、これが僕だということに気付いていませんよ。義姉さんにとってこれはただの黒豹です」
 兄に頭を預け、そしてその兄を見上げるように豹は答えた。

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