◇水嶺のフィラメント◇
「たった十三歳で、人生を終えるだなんて……うぅ、今からでも代われるものなら……わたくしめが!」

 フォルテはそう呟くと同時に顔を上げ、本当に身代わりにでもなろうとでも思ったのか、地面の切れ目に身を乗り出した。

 周りの男どもはギョッとして、今度こそは助けねばとフォルテに咄嗟に手を伸ばしたが、

「そんな身代わりになんてなったら、ホントに化けて出ちゃいますよー」

 涙でぼやけたフォルテの目の前、ヌッと下から何かが現れて、苦笑混じりの声でそう告げた。

「……お、お、お化けっ!?」

「ちゃんと生きてますって~!」

 徐々に鮮明となる輪郭は……その声そのままの表情をした──パニであった!

「パ、パ、パ、パニっ!! 生きていたのね!?」

 フォルテに向けられていた数々の手が、慌ててパニの両腕に移る。

 後ろへ身を引いたフォルテの前に、パニの全身が引き上げられた。

 もちろんちゃんと足もある。

「ひゃあ~危なかったよ! 真下に岩が突き出していて、ボクを掴んだ奴がそこに打ちつけられたんだ。その反動で手が放されてさ、ボクはその岩に必死でしがみついたってわけ」

「奴は死んだのか!?」

「あの速度で岩にぶつかったんだから、怪我していなくても即死だと思う。それに結局勢い余ってまた谷底へ落ちちゃったんだ……その岩からここまで登ってくるのも、ボクでも結構大変だったね」

 パニは両足を投げ出して、ふぁ~と一つ大きく息を吐き出した。


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