こんなのアイ?
ninth chapter




 悠衣が明け方に帰った月曜、街中はクリスマスイブを明日に控える独特の雰囲気だったが私はいつも通り出勤したあと、夕方には克実のマンションで食事を作っていた。

 牛肉とごぼうのしぐれ煮を今夜の分と作り置き分に分けていると

「ただいま」
「おかえり、克実。お疲れ様」
「愛実も、お疲れ様。風呂行ってくる」
「準備できてるよ」

 病院から戻るとまずお風呂に入りたがる克実は、病院では感じない匂いや菌を家に入った瞬間感じるからだと言っていた。

「腹ペコだ…昼食べ損ねた」
「えーまた?」
「ゼリー飲料は口にしたな」
「…私、それを聞く度に克実が開業医になることに大賛成って思うよ。はい、どうぞ」
「やった。しぐれ煮、久しぶり。いただきます」

 牛肉とごぼうのしぐれ煮、タコやきゅうりワカメの酢の物、豆腐となめこの味噌汁、そして小松菜のごま和えが次々に克実の胃袋に吸い込まれていく。いつもは澄ましている綺麗な顔を綻ばせてモグモグと頬を膨らませている兄に、熱を出して2日分の薬を使ったことを報告する。

「いつもと同じ感じだった?今は?」
「全く同じ感じだった。喉からきて寒気がして熱が一気に上がるけど、その時点で薬を飲んで汗かいて寝て下がった。一晩の熱だったけどちゃんと2日間は薬飲んだから今もう何も症状は残ってない」
「年2回、盆正月の恒例行事みたいだな」
「ほんと、自分でもびっくり。20過ぎてからよ」
「年齢はわからないが、誰もが日々感染している風邪なんかはその都度知らないうちに自分の免疫力で抑えて回復するけど、愛実は半年ごとに免疫力が落ちるんだな。インフルエンザにかかるわけでも胃腸風邪にかかるわけでもなく同じパターン…人からもらうというよりは、人からもらって抑えられるはずのものが抑えられなくなって自分の弱いところだけで反応する。あの抗生剤が愛実によく合うんだ、良かった」

 そして克実にはブレントと悠衣のことも話す。
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