甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





夜遅くに俺の部屋で少し食事をした紫乃は、少し落ち着いて見えた。あのスマホを手放したこと、部屋ではなくホテルにいること、そして4時間ほど眠ったことが良かったのだろう。

「お仕事…手伝いましょうか?昼間全く出来なくて申し訳ありませんでした」
「明日からでいいが…紫乃」
「はい」
「ここでこの時間まで敬語で‘申し訳ありませんでした’と言われると俺が休まらない」
「…すみません」
「じゃなく?プライベートな時間だ」
「…ごめんなさい」
「なさいもなし」
「…ごめん?」

プライベートな時間と言った俺のパソコンに一瞬目をやり‘仕事中でしょ?’とでも言いたげな表情が可愛いらしい。朝と違い少し表情筋が動いているな。

「明日解約通知書の提出するって」
「何でも屋さんですか?」
「…」
「…何でも屋さん?」
「そう、誠。大垣誠という友人だ。俺たちがここにいる間にコートを届けてくれると思うから紹介する」
「ありがとうござい…ありがと。お礼を言わないと」
「ああ。好きに飲み物持って行って。明日は8時半にここを出て、モーニングを食ってから出勤」
「わか…った」
「ピンクのブラウス買っただろ?明日はあれ着ろ」
「えっ…?」
「綺麗な色を身に付けて、気分明るく出勤するということだ」
「…うん、そうする」

明日は俺が買った物で全身を包んだ紫乃とご対面だな。
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