独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「ありがとう……それで、今朝言った通り、今日はそのまま実家に行こうと思うの」

「え……」

晴臣の胸がずきりと痛んだ。今日は上がったり下がったり感情の起伏が激しい。

「……昨夜の件で怒ってるのか? だったら」

「違うよ。そうじゃないけど、ゆっくり考えたくて。晴臣さんの顔を見てると落ち着いて考えられないから」

ぐさりとささる言葉にショックを受けたが、ここで引きさがる訳にはいかない。

「明日には戻るか?」

「……多分」

「多分じゃ駄目だ。絶対に帰って来てくれ。もし戻らないなら俺が実家まで行く」

「え? 晴臣さんが?」

「ああ。俺からも話したいことがある」

「……分かった」

瑠衣は意外そうにしながらも、晴臣が引かないと察したように了承をした。

「じゃあ明日。俺は八時過ぎには帰るようにするから」

「うん、それじゃあ明日に」

通話が切れると晴臣は深い溜息を吐いた。

「何やってるんだ俺は」

行動すべてが裏目に出ている気がする。
仕事だったら先を読み誤ったりしないのに。

今日は多忙で、舟木美帆の上司への連絡もままならなかった。

時刻はそろそろ八時になるというところ。
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