総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
私の肩に顔を埋めてそう言う彼の顔は見えなかったけれど、それよりもこの状況!
さっきの体の震えは裕翔さんによって簡単に奪われ、今は身体中がドクンドクンと脈打っている。
「ひ、裕翔さん……苦しい。それに、裕翔さんのせいなんかじゃない、から」
私がそう言うと、少し緩められた腕。でも裕翔さんは私から離れることはなく、ずっと抱きしめている。
……すると、
「桜十葉お嬢様っ……!?」
息を切らして走ってきた一条がこの光景に目を丸くしていた。地面に横たわる坊主頭の男。そして私を抱きしめる大人の裕翔さん。
「あ、……一条」
「あ、……じゃないですよ!何なんです!?この状況は!!」
一条の切羽詰まった声に裕翔さんが反応する。
「何って、桜十葉がこの男に襲われそうになってたところを俺が助けたの」
裕翔さんの言葉に、一条が何ですって!?と大きな声を出して今度は凄く項垂れている様子だった。
一条、いつものポーカーフェイスはどこにいってしまったの?
「す、すみませんっ!!桜十葉様をお守りするのが私の役目ですのにっ!!お怪我はございませんか?お嬢様はご無事ですか!?」
一条が裕翔さんに何度もペコペコとお辞儀をしている。
「いちじょーさん、桜十葉は無事だよ。でもお姫様の傍を離れないのが執事の使命だよね?違う?」