クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜

◇蓮戸山青少年自然の家


「寧々、本当に行かなくていいの?」

花乃ちゃんが最後の念押しで部屋のドアに手をかけながら私に聞く。

「え?寧々ちゃん行かないの?逢和たちの部屋、一緒に行こうよ~!みんなで行ったほうが楽しいよ!」

私たちと同室の小野田さんが花乃ちゃんの後ろから明るい声で手招きする。

その奥には不思議そうに私を見る苗村さん。

「うん!おでこぶつけちゃったのもあって、ちょっと疲れちゃって…ありがとう花乃ちゃん、小野田さん。私の分も楽しんできて~」

私は笑ってひらひらと手を振る。

「…分かった。スマホ持っていくから何かあったらすぐ連絡してね?おやすみ。」

「うん!おやすみ~」


…パタン。


扉が閉まって、さっきまでワイワイしていた部屋が静寂に包まれる。





『ね、逢和達の部屋遊びに行っちゃおうよ!』

それは、数分前のこと。


お風呂から上がってお布団も敷き終わったところに、前髪をきれいに整えた小野田さんがいたずらな笑みを浮かべて言った。

一人だけ行かないと言った私を、心配した花乃ちゃんが残ってくれようとしたけど
私は強く断った。

きっとカベ君、花乃ちゃんが来るの楽しみにしてるだろうし。
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