ノアが牽制してくれたおかげで、央太からの接触はなくなった。
 そのおかげで、こうして央太からの追求もなく平穏な生活を送れている。
 ホッとするものの、このままの状態で誤解させておくのはよくないだろう。
なんとかしなければ、と思う一方、どうしようもない現実に途方に暮れた。
 
 七月後半、梅雨も明けて夏本番といった感じだ。
 照りつける太陽はじりじりと肌を焦がすように熱く、日本特有の湿気も相まって身体を取り巻く空気は不快だ。

 ランチを外で取ったあと、会社に戻る道中なのだが、汗が滴ってきた。
額に滲む汗をハンカチで拭いながら、燦々と降り注ぐ太陽の光を見上げる。
 
 ――このままじゃ、よくないよね……

 幹太の父親について、央太に内緒にしておくのは決定事項だ。
 だが、ノアの咄嗟の機転で口をついた嘘については訂正しておかなければならないだろう。
 ノアに迷惑をかけたくないし、かける訳にはいかない。

 手の中にある携帯にチラリと視線を向けた。
 以前、央太に渡された名刺に書かれていた電話番号は今もしっかりとアドレス帳に入っている。