だめんずばんざい
side 岳人





「落ちちゃった」

その一言以降、一切軽快な言葉が出て来ないカオルちゃんは‘落ちちゃった’のではないと思う。だけれども、カオルちゃん自身、何が起こったのかわかっていないのかもしれない。とにかく‘ここ’にいてはいけないと思い、カオルちゃんを車に押し込んだ。

すぐに聡にいに電話を掛けて‘監視カメラ’について聞き確かめるように言ったが、それを聞いてもカオルちゃんは何も言わない。適当さや、どうでもいいや…を自分には使わないで、と思うがカオルちゃんはその傾向にある。人のお世話はきっちりしてから自分は適当でいいや…となるのだ。

「大丈夫だよ」
「大丈夫だからね」

車で繰り返し言ったのは、カオルちゃんがわかっていないことも俺がクリアにして綺麗に解決してあげるから…それに屋敷にだって、嫌だったら行かずに生きて行けるんだから大丈夫。

帰ってからカオルちゃんが食事の心配をしなくていいようにカフェでテイクアウトすることに決めると、彼女はコロンとカーペットの上で目を閉じた。

それを見ながら少し離れるとカフェに注文を入れる。そして着替えてからカオルちゃんにタオルケットを掛けた。いつもなら一緒に横になるのだが、聡にいからの電話がいつ鳴るかわからないので、ソファーでもなくもう少し離れるようにダイニングチェアに座った。

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