こころが揺れるの、とめられない
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チラチラと感じる視線を振り切るように、階段へ向かう足を速める。
午後の授業が始まる前、三澄くんとの件を、クラスメイトには「ちょっとした頼まれごとがあっただけ」と弁解できたけれど。
まさか、他のクラスの子にまで説明して回るわけにもいかず、……わたしへの好奇の目は、未だ少しだけ残っていた。
……もう……。
三澄くんはもう少し、自分の行動が及ぼす影響ってものを考えたほうが、いいと思う。
とうとうやってきてしまった放課後。
やっとの思いで2年生のフロアを脱すると、わたしはジャージの入った袋をぎゅう、と抱きしめた。
それに、あんな言い方……。
人のプライバシーを、交換条件みたいに。
——協力なんて、絶対、してあげないんだから。
待ってる、なんて言っていたけれど、一方的に約束を取りつけられただけだし、こちらにも予定というものがあるわけだし。
三澄くんに描いてもらいたい女の子なんて、いくらでもいるだろうし。
わたしが行かなくたって、きっと、困らない。
ブツブツと、心の中で御託を並べて。
自分の判断が間違っていないことを、言い聞かせる。