禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
どくどくと心臓が大きく鼓動し、耳の中で反響している。どうやら私は相当気を張り詰めているらしい。

「おかえりなさいませ、旦那様。お仕事お疲れ様です」

ニッコリと笑顔を作り、貞淑にお辞儀をする。その頭に不快な男の手が乗った。

「ああ、清華。出迎えご苦労。こちら、お客様の九條さんだ」
「……えっ?」

思いも寄らぬ名前に驚きながら顔を上げる。すると東藤の背後には、あの美しい悪魔のような青年、九條棗さんが立っていた。

「こんばんは。昨朝は奥様だとは知らずに、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「い、いえ」

なんで九條さんがうちに? 東藤とはどういう関係⁉︎
エレベーター待ちでばったり会って意気投合! なんて平和的なご近所さん関係ではないのは察せられる。東藤という男は、裏社会との関係性で会社を成長させた人物だ。利己的で享楽主義だが、それなりの警戒心がある。
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