禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
もともとある程度は知り合いだった? それとも九條さんが騙されてるとか?
うーん、わからない。
探偵みたいに慣れない推理をしてみるけれど、謎は全然解けない。

ひとつわかるのは、九條さんの方が余裕がある……ように見えること。言葉にはし難いが、隙がないというのだろうか。所作が洗練されているのだ。
対して東藤は、私と対峙している時より何倍も小者に見えた。例えば、今ここで互いが拳銃を胸元から抜いたとしたら、多分、東藤が撃たれる。
まあ、絶対にありえない例え話なのだけれど。

私は九條さんにスリッパを勧めて、応接用のソファが向かい合うリビングルームへ案内する。
東藤は善人ぶった笑顔で、「来客に不慣れな妻ですまないね。でも可愛いだろう? 自慢の愛妻だよ」なんてうそぶいている。

「確かに、仔猫みたいで可愛らしい奥様ですね」
「あ、はは。仔猫、ですか」

怯えてるのがバレてるのかな、と九條さんを見上げると、彼の色っぽい唇が茶目っ気たっぷりに弧を描く。
わっ。九條さんって、こんな顔もするんだ。
いてもってもいられない気恥ずかしさを感じて、頬がじわじわと熱を持つ。
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