禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
結婚から四十日目、棗さんが引越してきて十一日目。
東藤が帰ってきてしまった。また以前の日常に逆戻りだ。

「九條君からお礼の連絡がきたよ。裏社会に入ったばかりの御曹司は、世間知らずで飼いやすそうだ。ちょっと優しくしただけで〝東藤夫妻〟に懐くなんてなぁ」

東藤は善人面で私の顎を力一杯掴んで引っ張る。

「お前、不倫はするなよ? お前らの飼い主は俺だ」

想いが悟られぬようにしなくちゃ、と固唾を呑む。私が棗さんと禁断の恋に落ち、身を焦がしているなんて絶対にバレてはいけない。

結婚から四十五日目、棗さんが引っ越してきて十六日目。
最近の東藤はイライラしている。
それに伴い、棗さんとお話しできる機会は、食材定期便と新聞を受け取りに行く日にエレベーターの前で会うだけになってしまった。

けれどエレベーターという密室の中で、言葉少なに、棗さんのとろりと甘い熱を帯びた瞳に見つめられると、心臓がドキドキと鼓動を早める。
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