禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
第四章 甘く切ない背徳の一夜
東藤の帰らない一週間は、これまでの一ヶ月に比べると夢みたいだった。
家族への心配は尽きないけれど……。それも、棗さんが両親からの手紙を届けてくれたことで、少し救われた。

「読み終えたら燃やさないといけないから、俺に声をかけて」

どうやって手紙を? 棗さんは私の両親を知ってるの?
聞きたい質問は沢山ある。棗さんはきっと人知れず、私の代わりにすごく頑張ってくれたのだと思う。私はあまりの嬉しさと感謝で泣き崩れた。

「ありがとう、ございます……っ」

愛する両親からの手紙を何度も読み返した。家族も会社の皆も無事で元気に過ごしているそうだ。どうか希望を捨てずに自分を強く持って、と書いてあった。それから、九條さんを信じてとも。

「私も棗さんを信じてる」

毎日、棗さんのために食事を作る時間はうきうきと心が華やぐし、彼の家で過ごす一時間は、なによりも甘いのに切なくて……胸が痛いほど、苦しい。
背徳的な関係なのはわかっている。だけど、この一瞬に幸福感を感じずにはいられなかった。
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