Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜
2
 それは突然やってきた。

 体の痣のせいもあり、外出が億劫になっていた瑞穂は、買い物はネットスーパーで済ませて家に引きこもるようになっていた。

 日焼け止め対策と言い訳をして長袖を着たっていい。それでも何かの拍子にバレてしまうのではと思うと怖くなる。だってそのことを崇文に責められたら、今までのような事態では収まらないかもしれないもの……。これ以上の暴力はもう耐えられない……。

 怖いのに逃げ出せないのは、逃げた後の方がもっと怖いから……。

 その時だった。突然インターホンの呼び鈴が鳴ったのだ。体をビクッと震わせる。宅配便なら外の不在用のボックスに入れてもらおう。そう考えながらモニターに近寄る。しかしそこに映し出された人間を見た瞬間、瑞穂は口元を押さえて思わず後ろに退いた。

「どうして……!」

 モニターにはスーツの男性が映り、カメラをじっと見つめていた。それは紛れもなく恵介だった。

 久しぶりに見た彼は歳を重ね、最後に会った時よりもずっと大人びている。

 まさか恵介が会いに来るなんて……嬉しいのに、今のこの状態で彼に会うことは出来ない。恵介は小さい頃から勘の良い子どもだった。だからこそ、私のちょっとした変化にも気付く可能性がある。

 瑞穂は口を閉ざしたまま居留守を使うことを決めた。恵介がモニターに近寄り、再びインターホンを押す。瑞穂はモニターに映る恵介をただ見つめていた。

 諦めたのか、モニターの前から恵介がいなくなる。そっと息を吐き、どこか寂しさを覚えながらも、これで良いのだと自分に言い聞かせた。
< 7 / 53 >

この作品をシェア

pagetop